私たちが最後に見学したのは橋本地区の峽の原(はけのはらと読みます)工業団地にある横浜金属株式会社の工場でした。
この工場では貴金属を含むスクラップから金や銀・白金の地金を回収しています。つまり,貴金属のリサイクルを行っているわけです。
もともとスクラップとしてまわってきたのは,貴金属を原料や加工材料として使用した製造工程の過程で出てくる歩留まり材や不良品,そして故障品や使用済みの製品などでした。
いま市場には,たとえば電子回路に金を使った電子機器が大量に生産され出回っています。特にこの数年間で爆発的に普及したPHSや携帯電話の中には貴金属を使った部品がたくさん使われています。多くのハイテク機器もそうですね。そして,それらは思いのほか短い期間で古びて,廃棄されています。それだけなら始末に困るゴミは,実はたくさんの有用な金属を含む鉱石でもあるのです。この工場は,そんな貴金属リサイクルの一環を支えているのです。
PHSなどのスクラップはまず粉砕され,プラスチックなどの金属でない部分が燃やされた後,前準備の化学処理をほどこして電気分解にかけられます。写真の装置では銀を回収しています。こうして回収された貴金属は鋳造過程にまわされて,所定の大きさの地金にされて出荷されることになります。
右の写真,すでにこれでほとんど純粋な銀の状態なのですが,見た目ではそう見えませんね。たとえば,融かした銀を鋳型にはめてインゴットの形にしてもそのままでは結晶が浮き出てきれいには見えません。これを扱っている業者であればそれで十分なのですが,一般の人には評価してもらえないのだそうです。そんなわけで,できた金塊や銀塊は後で研磨されます。
一連の工程の中には成分量を分析したり,化学処理を加えたりする部分があります。工場の中にはそのための精密で高価な分析機械が置かれていたりします。化学処理をする部屋など,学校の理科実験室のようですね。
街中に大量に出回っているPHSや携帯電話は用が済んでもうまく処理をすればたくさんの貴金属が回収できるのですね。自然の鉱山から貴金属を掘り出すことはこれからますます難しく,コストもかかるようになります。だからなおさらリサイクルが重要に思いました。
でもこのようなリサイクルは貴金属だからできるといえるかもしれません。これが鉄や鉛のような金属だったらコストの面で無理かもしれませんね。
1999. 2. 3 野外研修委員会