2000年度 夏季 地理野外研修 報告

1,研修テーマ 奥美濃・飛騨の地域性 〜伝統文化と地域開発の現状〜

2,研修コース

8月20日(日)
岐阜羽島に集合。
東海北陸自動車道を利用して郡上八幡へ向かう。
車中で安元先生(鶯谷高校)より「岐阜県の概要」「長良川河口堰」など、馬淵先生より「奥美濃地方」「郡上八幡」など説明を受ける。
郡上八幡町で伝統的な町並みを見学。
白鳥町の白山文化博物館を見学。館長の案内で白山白滝神社も見学。
宿舎で夕食後、郡上踊りを見学または参加する。白鳥町のハートピア四季に宿泊。

8月21日(月)

分水嶺公園を見学。
この後、翌日の飛騨高山までは新谷先生(高山高校)と滝村先生(益田高校)による案内・説明。
白川郷では村役場で白川村教育長より説明を受け、その後は荻町の合掌造り集落を見学。
国重要文化財指定の旧遠山家の民俗館を見学。
古川町で祭り会館伝統的な町並み民俗資料館を見学。
古川町のホテル季古里に宿泊。

8月22日(火)

国府町の安国寺で経蔵を見学。
国府町教育長の案内・説明で民俗館と郷土館を見学。
高山高校から高山市内を俯瞰した後、柏木工所を見学。
昼食を兼ねて伝統的な町並みを自由見学。
その後、バスで移動して岐阜羽島で解散。

3,概要説明
[岐阜県の概要]
 従来型の地場産業に加えて、IT産業など先端技術産業の育成を進めている。首都機能移転候補地に岐阜東濃地域が選ばれたことで話題になっている。

[長良川河口堰]

 河口より5.4km上流に建設された可動堰。1988年工事着工。1995年7月6日から本格運用開始。治水効果が疑問視されるなど長良川自然保護運動が高まった。塩水の逆流には効果あり。汽水に生息するシジミは激減。

[奥美濃地方]
 長良川上流の7ヵ町村で構成された地域。この地方の中心が「郡上郡」で、郡上とは「武儀郡」の上にあるという意味。古代から白山信仰の美濃馬場(美濃の表玄関)を中心とした信仰の地域になった。現在、奥美濃地方の結節点となっている八幡町の他、木材加工業・スキー観光の白鳥町、高冷地野菜・酪農・スキー観光の高鷲村などがある。

[郡上八幡町]
 16世紀半ば、東氏を滅ぼした遠藤氏が八幡山に築城。17世紀後半、6代城主遠藤常友が城下町を整備し、現在の町割りの骨格ができた。18世紀半ばに「郡上藩宝暦騒動」がおきている。中世以降、郡上郡の結節都市として発展してきた。地場産業である木材加工業、奥美濃地方の物資の集散地に加え、「踊りと水と城下町」をテーマに観光業に力を入れている。踊りとは「郡上踊り」、水とは「宗祇水」や町内を流れる用水のことである。

[郡上藩宝暦騒動]
 郡上一揆。18世紀半ば、赤字財政に苦しんでいた郡上藩が定免法から検見法に切り換えて、年貢の増収を図ろうとした。これに反対した農民が強訴したが、藩は農民の代表らを監禁。しかし、別の農民の代表が幕府の老中の行列に「駕篭訴」を決行。さらに目安箱に入れる「箱訴」を決行。幕府の取り調べで藩主の金森氏はとりつぶしになったが、農民14人も死刑になった。

[郡上踊り]
 日本三大踊りのひとつ。17世紀前半に2代城主遠藤慶隆が士農工商の融和を図るために農民に盆踊りを奨励したことから始まったといわれる。戦後、保存会の努力により「見せる」踊りから観光客も「踊る」踊り」へと変わってきたことで有名になった。1973年、郡上踊り全10曲が国の重要無形民俗文化財に指定。

[宗祇水]
 飯尾宗祇が、時の郡上城主東常縁より古今集の奥義を伝授してもらうために郡上八幡に滞在。この泉のほとりで草庵を結んだところから命名された。

[白山信仰]

 美濃・飛騨・越前・加賀・越中の5カ国にまたがる白山(2702m)の山岳信仰。全国に2700以上の白山神社がある。美濃・越前・加賀の三馬場があり、白鳥町には白滝神社や阿弥陀滝があり、美濃馬場の拠点となっていた。

[分水嶺公園]
 太平洋に注ぐ長良川と日本海に注ぐ庄川の分水を公園に整備してある。

[飛騨地方]
 唯一の市である高山市を中心に、山間の盆地や川沿いに町・村が点在している。飛騨という地名は山襞(やまひだ)の意味からきたといわれる。四方を山に囲まれており、古川盆地、高山盆地がある。縄文時代の遺跡が多く、太平洋側〜日本海側の交通の要所でもあり、古くから文化が開けていた。古代、「飛騨の匠」として飛騨出身の大工たちは全国に知られるようになった。16世紀後半、金森氏が飛騨を平定した後は、古川・高山など城下町が形成された。

[白川郷
 庄川の川沿いに成立した集落で、飛騨の西に位置する。五箇山とともに「合掌造り」の民家がある集落として有名。かつては約3000戸あったが、ダム建設などで減少し、現在は荻町集落などに約180戸残っている。独特の屋根裏部屋は養蚕や穀類の貯蔵に使われていた。1995年、「白川郷・五箇山の合掌造り集落」が世界遺産に登録された。

[古川町]
 宮川(神通川へ合流)が流れる古川盆地に位置する城下町。16世紀後半、飛騨を平定して高山城を築いた金森長近の養子可重が、町並みを高山に似せて碁盤目状に整備した。現在も古い町並みが残っている。地場産業である木工加工業の他、「古川祭」・スキーなど観光業がある。

[古川祭]
 起こし太鼓ともよばれる神事。夜中、神輿とともに神社を出た大太鼓に向かって、付け太鼓をかついだ各町内の若者たちが近づこうと先を争ってもみあう。夜が明けると、高山祭のようにからくり人形の屋台がひきだされる。国の重要無形民俗文化財に指定。

[国府町
 町名になっているように、古代に国府がおかれ、飛騨の政治の中心地だった。現在は農業中心の町だが、安国寺の経蔵や古代住居跡など数多くの文化財・史跡があることから注目されてきている。

[安国寺]
 臨済宗妙心寺派の名刹で、足利尊氏が国ごとに建立の安国寺の一つ。この寺にある1408年建立の経蔵は、八角輪蔵としては我が国最古のもので、国宝に指定されている。

[高山市]
 飛騨のほぼ中央、高山盆地に位置する飛騨地方唯一の市。16世紀後半、飛騨を平定した金森長近が高山城を築き、城下の町並みを京都風に碁盤目状に整備した。木材加工業が主産業で、日本の代表的な家具の生産地として知られる。また、現在も残っている古い町並みや高山祭などで有名な観光地になっている。

[高山祭
 「山車祭」の代表的な祭で、春祭と秋祭がある。23台の美術工芸の粋をこらした絢爛豪華な屋台(山車)が町中にひきだされる祭として知られる。国の重要民俗文化財に指定。











郡上八幡の伝統的な町並み
「うだつ」の上がっている家屋。
道路の両側に「用水」























郡上八幡の宗祇水(白雲水)























郡上八幡町内を流れる用水




















郡上踊り
















白山文化博物館(白鳥町)

























阿弥陀滝






















分水嶺公園

















合掌造りの集落(白川郷)













祭り会館(古川町)




















伝統的町並みにある酒蔵
















安国寺の経蔵(国府町)
















柏木工所(高山市)















高山市の伝統的な町並み