横浜地区No1-10  鶴見区の再開発2 (横浜市鶴見区)

2008年11月作成

 

1.鶴見は交通の結節点

 鶴見は、鉄道交通の要衝である。JRの京浜東北線、鶴見線、東海道線、横須賀線、湘南新宿ライン、東海道貨物線、そして私鉄の京浜急行線の各線が走っている。1929(昭和4)年、東洋一と言われた新鶴見操車場の開業以降は、品鶴線(品川・鶴見間の貨物線、現在の横須賀線)が京浜間の貨物輸送の大動脈となり、工業製品や食料など大量の物資が行き交った。

 貨車輸送がピークに達した高度経済成長期の、1963(昭和38)年11月9日、国鉄史上最悪の死者161名にのぼる鶴見事故が発生した。鶴見事故の原因は貨物列車の競合脱線によるものだが、事故の背景には、東京・横浜間の過密運行があげられた。事故対策(過密ダイヤの解消)のため、1966年に旧国鉄は、横浜駅を迂回する新しい貨物線計画を発表した。だが、羽沢貨物駅付近の沿線住民を中心に反対運動が起こり、新線の建設は大幅に遅れた。1979年に貨物新線が完成した時には、貨物輸送はトラックに取って代わられており、新線建設は旧国鉄の赤字を増やす要因ともなった。


写真1 鶴見駅ホームからの風景 高架線は鶴見線の線路。

 1980年、東海道線と横須賀線が分離運転を行うため品鶴線を旅客化し、横須賀線が走るようになった。現在は湘南新宿ラインも走り、横浜から渋谷・新宿方面への通勤・通学時間を大幅に短縮している。今後はJRと相鉄線との相互乗り入れも予定されており、横浜・東京間の鉄道交通は、ますます多様化し便利になるであろう。ところで、鶴見を通る路線のうち、鶴見駅に停車するのは京浜東北線・鶴見線と、私鉄の京浜急行だけである。また、京浜急行も特急は京急鶴見の駅には停車しない。このため、沿線住民の各線停車への要望は強く、横浜市では京浜急行に対し特急停車の働きかけを行っている。


写真2 総持寺前の踏切 多くの列車が行き交うため、1時間に数分しか開かない時間もある。いわゆる「開かずの踏切」となる。

2.鶴見区の商業

 「鶴見区史」によれば、1954(昭和29)年当時の鶴見区は、横浜市の税収の4分の1を負担し、人口は20万人、重工業地帯もかかえることから、一時横浜市から分離する声があった。商業に関しても、工業地帯と多数の人口背景に、1965年の時点で、区別の商店数は中区に次いで2位、5122店で市全体の11%を占めていた。鶴見駅や生麦駅周辺、潮田などの商店街は多くの買い物客でにぎわった。また、工場が多いことと花月園競輪場などの関係からか、市内の他区に比べ飲食店の占める割合も高かった。

写真3 2008年に閉店した鶴見駅ビルカミン 

 かつては栄えていた鶴見駅周辺も、最近では一転して商業施設の閉鎖・閉店が目立つようになってきた。2008年9月30日に、東口の駅ビルCOMIN(カミン)が、43年の歴史(1965年秋完成)の幕を閉じた。ピーク時には、100億円以上あった売上が、2007年には90億円台まで低下し、建物の老朽化やバリアフリー化の遅れとあわせ、跡地利用の計画もないまま閉店された。同じく2008年には、西口のスーパーマーケット「トポス」も閉店した。

 鶴見駅周辺には、西口にセイユーと京急ストアが、東口側にはイトーヨーカ堂もあり、スーパーマーケットの激戦地となっている。また、隣駅の川崎駅には、大型商業施設ラゾーナが開店、同じ川崎区内の臨海部には外資系のスーパーコストコも開業した。現在、鶴見区内の商業施設は区内外の激しい競争にさらされており、集客・売上の面で厳しい状況にある。


写真4 鶴見駅西口の様子  下末吉台地が線路近くに迫り、スペースが手狭な印象を受ける。バスターミナルは鶴見区内陸部からの通勤・通学客が多数利用する。


3.鶴見駅東口の再開発計画

 JR線と京浜急行線の間に広がる、旧国鉄の貨物操車場跡地約1.2ヘクタールの土地で、都市再生機構を事業主体に再開発工事が進められている。2010年7月に事業が完成すると、地上31階建ての住宅(301戸)のほか、商業施設、ホテルの他に、市の公益施設として区民文化センターやコミュニティハウス、国際交流ラウンジや保育園などが入る予定である。

 鶴見駅東口再開発計画は、はたして鶴見駅周辺の商業地復権の起爆剤となるか。同様の再開発計画が東神奈川で進み、またライバルとなる川崎駅周辺や横浜駅周辺の商業地も整備が進む。サブプライム問題以降の世界的不況も、新しい不動産開発事業には逆風となるであろう。発展の鍵は、いかに地元に親しまれるか、消費者を他地区に流出されないか、鶴見区の交通の利便性をどのようにして活かすかにかかっている。


写真5 京急鶴見駅から見た再開発用地 2年後の完成を目指し工事が進む。

(写真1は2005年6月、写真2〜5は2008年10〜12月撮影)

【釜利谷高校 井上 達也】

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