川崎地区No2-3   味の素の城下町今昔(川崎区) 

 2008年2月作成

 

1.味の素の工場・研究所

 京急鈴木町駅の北側には、味の素の工場や研究所が建ち並ぶ。味の素(当時は味の素本舗鈴木商店)は、1914年(大正3年)に川崎で操業を開始した。現在約10万坪の敷地に2工場、10の研究施設やセンターを持ち、パートを含め約4000名が働く。このあたりの町名「鈴木町」は、鈴木商店にちなんで命名され、また、工場周辺の住宅地には多くの従業員や家族、旧従業員も暮らし、かつての「企業城下町」の面影が残る。

 川崎での操業90周年を迎えた味の素は、2005年〜10年に川崎事業所の設備を400億円かけて一新する。神奈川県や川崎市、横浜市には、2002年の都市再生特別措置法の施行と都市再生予定地域の指定を受け、企業に対するさまざまな助成制度がある。例えば、横浜市のみなとみらい地区には、2009年の開港150周年までに、日産自動車の本社機能が移転する予定であるが、同社は横浜市の助成制度を利用している。味の素もまた同様に、神奈川県の産業促進方策の助成制度で、400億円のうち50億円をまかない、リニューアルする計画である。高度経済成長期の新産業都市構想のように、行政による税金を投入した地域開発の手法は問われる面も多いが、川崎・横浜では産業再生の名目で、新たなプランが今後も発表されるであろう。

 川崎事業所では現在、同社の主力商品である「ほんだし」や本格的な中華料理が家庭で簡単に楽しめる「Cook Do」などが製造されている。また、集約化される研究開発棟では、同社が得意とするアミノ酸分野の新製品開発を進める。川崎事業所は、今後、製造の拠点から研究開発の拠点への色彩を一層強めることとなる。

 川崎区内では、味の素の他にも、JFEやキヤノンなどの大企業が研究機関を新設あるいは計画する動きが目立っている。京浜工業地帯の中核での、重工業の製造拠点から最新技術研究拠点への転換が着実に進みつつある。


2.ミナトマチプラザ 

 1998年7月日鉄鋼管(旧東芝鋼管、本社川崎市)が、本社工場跡地(味の素の工場と京急大師線を挟んだ南側の土地)にミナトマチプラザを設置し、賃貸テナントとしてイトーヨーカ堂川崎港町店が営業を開始した。その後2000年には第2期商業施設である「ミナトマチプラザアネックス」(大正堂とヤマダ電機に賃貸)が業務を開始した。

 ミナトマチプラザとアネックスを合わせた店舗面積は約2万5千平方メートル、自動車の収容台数1,300台という巨大なショッピングセンターである。郊外では良く見受けられる駐車場を完備したショッピングセンターであるが、川崎区内には初めての登場であった。当然、既存の商店街等への影響も大きく、周辺にあった伊勢町・旭町商店街、中島中盛会などでは生鮮・衣料などの商店を中心に閉店が相次いでいる。

 川崎区内では2000年に小田栄ショッピングプラザ(昭和電線工場跡地)が開設され、エスパ(イトーヨーカ堂)がキーテナントとして入店した。また、池上新町の千代田化工機の跡地には2007年8月にアメリカ資本の大型ショッピングセンターコストコがオープンし、同跡地には賃貸の大型倉庫も建設中である。川崎市内の工場跡地は、70年代、80年代にはマンションや配送センターとして利用されることが多かった。現在は、国道や首都高速の便に恵まれ、東京南部から横浜市東部にまで商圏が期待されることから、マンションや倉庫以外にSCの進出があいついでいる。いわゆる産業の空洞化により、川崎区内には広大な工場跡地が存在しいる。味の素のように川崎に残る企業もあれば、工場跡地として活用する企業もある。マンション開発、ショッピングセンター、物流基地、そして研究所とこれ以外の動きは見られないのが現状といえよう。

                                                                                 【釜利谷高校 井上達也】



写真1 味の素川崎事業所入口付近および研究施設(2008年2月撮影) 鈴木町駅の北側は味の素の構内で、一般の乗客は立ち入ることは出来ない。隣の川崎大師駅までの間、広大な敷地内に研究棟、工場、倉庫などの建物が連なる。



写真2 味の素の研究施設(2006年3月撮影) 新設された研究棟の様子。



写真3 味の素の資料館(2007年2月撮影) 敷地内の資料館。一般に広く開放されてはいないが、工場見学会や同社の料理教室などの際、見学が可能。創業当時から現在に至る、貴重な資料が収蔵されている。



写真4 味の素の資料館(2007年2月撮影) 川崎事業所の昭和7年当時の写真。京浜工業地帯の昔の様子を知ることが出来る。




写真5 ミナトマチプラザ(2008年2月撮影) イトーヨーカ堂の他、隣接するアネックスプラザには大正堂とヤマダ電気がはいる。手前の空き地部分には川崎縦貫道路の建設が予定されている。



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