神奈川県内の再開発

2011年4月作成

 

1.滞る再開発計画


【神奈川県内の主な再開発計画】

横 浜   ・北仲通地区(中区・帝産倉庫跡地)

      ・鶴見駅東口再開発計画

      ・戸塚駅西口再開発計画

川 崎   ・殿町3丁目地区(川崎区・いすゞ自動車川崎工場跡地)

      ・リヴァリエ エアリータワー(川崎区・日本コロムビア川崎工場跡地)

      ・川崎駅西口再開発

      ・武蔵小杉駅周辺再開発(中原区・NEC工場跡地他)

湘 南   ・大船駅周辺

      ・湘南C-X(シークロス)都市再生事業(藤沢市・関東特殊製鋼跡地)

西 湘   ・小田原駅東口

県央・県北 ・高座渋谷駅前再開発事業(大和市)

      ・日産アドバンスドテクノロジーセンター他(厚木市・青山学院大学跡地)

      ・相模大野駅西側地区再開発事業

      ・橋本駅南口地区再開発(相模原市)


写真1 北仲通地区再開発の状況(2009年3月撮影)


 200912月の神奈川新聞の記事は、みなとみらい21地区(以下MM21)に隣接する、北仲通地区の再開発ついて、以下のように伝えている。


 帝蚕倉庫跡地その他、7.8ヘクタールの広大な再開発計画用地のうち、2.2ヘクタールは現在大手ディベロッパーの森ビルが所有している。当初の計画では、森ビルと大和地所の2社が開発の主体となって、オフィス、商業施設、ホテルをテナントとする地上52階・約200メートルと地上44階・約150メートルの高層ビル、そして1250戸の住宅が入居する予定のマンションの、計9棟のビルが建設される予定であった。だが、不況の影響でテナントの入居見込みが断たず、計画の規模を大幅に変更せざるを得ない状況である。

 

 藤沢市辻堂駅北口の関東特殊製鋼跡地の「湘南C−X(シークロス)」計画では、住友商事が計画するショッピングセンターの着工が13か月遅れた。この計画は、規模を当初案より縮小し、2011年末に完成予定である。

 長い伝統を誇った日本コロムビア川崎工場(川崎市川崎区)は、2008年、マンション建設を目的に解体された。その後、マンションの建設着工は遅れていたが、昨年事業主体がコスモイニシアから京浜急行電鉄に変わり、地上29階建て、総戸数256戸の大規模マンション計画が、20132月の完成を目指し動き始めた。前述の北仲通地区をはじめ、県内では現在、住宅・マンション開発計画は凍結中のものが増えている。このような状況ので、コロムビア跡地の計画が着工に至ったのは、東京に隣接する交通の利便性、通勤者のニーズ、目の前を走る京急大師線の利用客増加を狙う京浜急行電鉄の意図等、優位な条件が重なったからである。


写真2 解体中の日本コロムビア川崎工場(2008年8月撮影)



写真3 2010年3月19日桜木町駅前に新たに開業したショッピングモール「コレットマーレ」


 県内では今後、工場の地方・海外移転や、老朽化した大規模住宅の再開発など、遊休地が増加する傾向である。また、工事着工からすでに30年を経過して、未だに計画途上のMM21の例もある。日本国内では、今後ますます少子高齢化がすすみ、人口も減少する。このような状況を考えると、神奈川県内の不動産需要が、急速に回復するとも思えない。県全体、さらに行政区分を超えた、住宅や商業地の効率的・計画的な配置を健闘する時期が来ているのかもしれない。


2.完成した駅前再開発

 20104月、戸塚駅西口のショッピングモールビル「トツカーナ」(公文国際学園高等部 中村洋介氏担当)がオープンした。既存の商店街を取り壊し、バスターミナル、周辺道路を整備し、さらに商店をショピングセンター化する事業は、3度の計画変更の後に実現した。戸塚駅西口には、区役所をはじめとする公益施設も移転する計画(2012年完成予定)である。商業施設(トツカーナ・戸塚パルソ)、バスターミナル等が集約され、街の姿は大きく変わりつつある。


写真4 大きく変貌を遂げた上大岡駅前

 横浜市内では、京急上大岡駅前には20104月、ショッピングセンターと、346戸の住宅が入居する33階建ての高層ビル「Mioka」が、また5月には家電量販店ヤマダ電機LABI上大岡店がオープンした。1991年に決定された「上大岡駅西口地区再開発事業」は、今回のMiokaの完成をもってほぼ完了した。

 戸塚、上大岡の再開発事業は、横浜市が地元の要請を受けて計画したもので、行政が主体となることで事業計画を完成させた。

 その他の再開発計画では、「鶴見駅東口地区第一種市街地再開発事業(施工者はUR都市機構)」が、 2011年3月に完成した。駅前に建設された31階建ての高層ビル「シークレイン」には、商業施設、ホテル、住宅、保育施設や、区民文化センターが入居している。また、相模原市の「相模大野駅西側地区第一種市街地再開発事業」が、来年の竣工予定で建設が進む。


3.新たな再開発計画

 「変わりゆく神奈川県」執筆の段階では未定であった、いすゞ自動車跡地再開発計画(川崎市川崎区殿町3丁目)がいよいよ動き始めた。羽田空港の国際空港化は、201010月すでに実現したが、神奈川県側の玄関口にあたる「神奈川口構想」の目途は立っていない。そこで、川崎市はこの地区を先端産業の拠点と位置づけ、整備を開始した。手始めに、2011年の完成の完成を目標に「(仮称)再生医療・新薬共同開発センター」を、慶応大学と共同で整備を進めている。さらに2011年には環境・健康・国際をコンセプトとした「(仮称)産学公民連携研究センター」を設置し、これら二つの施設を中核に、先端産業・研究機関の誘致に乗り出す。

 また、駅前開発では、事業主が決まらず延期されてきた、京浜急行日ノ出町駅前(横浜市中区)の再開発事業が始動する。

【釜利谷高校 井上 達也】

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