湘南地区No.4-2 松竹大船撮影所から鎌倉女子大へ(鎌倉市)


2007年12月作成

 

1.松竹大船撮影所の盛衰

松竹大船撮影所は、1936(昭和11)年にそれまでの松竹蒲田撮影所(現在の東京都大田区)に代わる

形で開設され、主に現代劇の撮影が行われた。大船駅との間には住宅地が分譲され、資金調達という目的のほかに、街頭ロケの場所としても活用された。当時建設された住宅や橋の一部は現在でも残っている。

ここで撮影された作品には、小津安二郎監督の諸作品や、山田洋次監督・渥美清主演の「男はつらいよ」シリーズなどがある。木下恵介や大島渚などの監督も、松竹時代に大船撮影所で活躍していた。最盛期には、時間がない映画のスタッフが短時間で食事できるように工夫された「かつめし」(とんかつをご飯と一緒に型に入れてお皿に載せたもの)が付近の洋食店で考案され、次々と出前されたなどというエピソードも残っている。

1995年には鎌倉シネマワールドが敷地の一部を使って開設されたが、渥美清の死去(1996年)による「男はつらいよ」シリーズの打ち切りや松竹の経営悪化により、大船撮影所全体の敷地が売却されることとなり、60余年でその歴史を終えた。


2.短命に終わった鎌倉シネマワールド

 鎌倉シネマワールドは、松竹の創業100周年事業として企画された映画のテーマパークである。時代劇や「男はつらいよ」のセット、さらには黄金期のハリウッドについての展示を目玉に、1995(平成7)年にオープンした。開設当初は大変な人気となり、観光バスで次々と観光客がやってきたが、渥美清の死去によって2年目から急激に入場者数が減少して巨額の赤字を出したため、1998年12月にわずか3年で閉鎖されてしまった。


3.鎌倉女子大学へ

  その大船撮影所の敷地は鎌倉女子大学に売却され、現在は同大学・短期大学の大船キャンパスとなっている。同大学はそれまで鎌倉市岩瀬で幼稚部から大学までのすべての部門が同居し、手狭であった。大船撮影所跡を獲得して大学・短期大学をここに移転し、2003年に大船キャンパスとしてオープンした。従来の岩瀬は岩瀬キャンパスという名称となり、高等部・中等部・初等部・幼稚部の校舎となった。

                             【県立鶴嶺高校 能勢 博之】

写真1 シネマワールド入口付近 



写真2  短命に終わった鎌倉シネマワールド (写真1・2は1998年ごろ撮影)



写真3 鎌倉女子大学正門(2007年7月撮影) 写真1の「大船撮影所」という表示の下付近から撮影

   
 


写真4 写真2よりやや斜め手前から(2007年7月撮影)

 この写真の上にあるイトーヨーカ堂と三越の連絡通路が、写真1の渡り廊下にある「大船撮影所」という表示

のある場所である。

    


写真5 解体され更地の状態になりつつある松竹大船撮影所とシネマワールド(2001年12月撮影)

 すぐ背後は、台地であることがわかる。

  

   
   


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