横浜地区No1-4  関内の近代洋風建築1(中区)

2008年2月作成

 

1.関内周辺の洋風建築

 関内地区は関東大震災や、戦災とその後の連合軍による占領によって2度の壊滅的な打撃を受けたため、開港当初からの歴史的建造物は失われてしまった。それでも異国情緒を感じさせてくれるのは、震災後に建てられた洋風建築が町のあちこちに見られるためだろう。主に昭和初期に建てられた建物は、現代の建築物には見られなくなった、ある種の重厚さを持ち、町の雰囲気を演出している。

 一方で、これらの洋風建築も最近では老朽化し、民間の場合は資産の売却と言った理由で、取り壊されるものが少なくない。横浜の歴史を伝える洋風建築は、今どのような状況に置かれているのだろうか。


2.船乗りに親しまれた3つの塔

 外国との交流が客船の時代、モダンな横浜の洋風建築は、港のシンボルであった。みなとみらい地区などに高層ビルが建設される前までは、関内周辺地区に高層の建物は少なく、入港した船からは良い目印であった。なかでも、神奈川県庁、横浜税関、横浜開港記念館の3つの建物は、キング、クィーン、ジャックになぞらえられ親しまれた。これらの建物はすべて公共の建物であり、建物そのものの保存もよく、また建設当時の面影を残すよう配慮され改修工事が行われている。


3.神奈川県庁本庁舎

 船員達から「キングの塔」の愛称で呼ばれていたのが、神奈川県庁本庁舎である。旧庁舎は関東大震災で倒壊したため、震災後に一般公募で小尾嘉郎の設計が採用され、1928年に現庁舎が完成した。鉄筋五階建ての階上に「和風」の塔がそびえる独特の外観は帝冠様式と呼ばれ、これ以後建設された官庁の設計のお手本となった。今でも現役の県庁舎として使用されている。


写真1 神奈川県庁本庁舎(中区日本大通1) 2006年3月撮影



4.横浜税関

 横浜税関はモスクの尖塔を思わせる塔を持ち、別名「クィーンの塔」と呼ばれた。県庁本庁舎と同じく、旧税関が震災で倒壊した後の、1934年に建設された。

 この写真は海側からの物だが、税関らしく海から見た外観に風格をもたせる工夫が見られる。また建設当時国の威信をかけたため、先に建設された県庁より、建物の高さが高くなるように設計された。

 税関の建物は敗戦直後、アメリカ軍によって接収され、東京に総司令部が移る以前の占領初期にGHQの総司令部がおかれた。現在は、リニューアル工事により以前の外観を残しつつ、内部は近代的な建物に生まれ変わった。


写真2 横浜税関(中区海岸通1−1)07年11月撮影




5.開港記念会館

 赤煉瓦と花崗岩を組み合わせた美しい外観を持ち、国の重要文化財に指定されているのが、「ジャックの塔」こと横浜市開港記念会館である。横浜開港50周年を記念して建築計画がたてられ、1917年に完成した。関東大震災や戦災で大きな被害を受けたが、幸いにも倒壊はまぬがれた。1988年にドーム・屋根の改修工事が実施され、建設当時の外観に復元された。


写真3 横浜市開港記念会館(中区本町1−6) 08年6月撮影


【釜利谷高校 井上達也 】

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