県央・県北地区№6-08 健闘するフルーツの里「伊勢原市」

2008年9月作成

 

1.伝統的な農業は健在

 伊勢原市は、神奈川県の中央に位置し新宿や横浜からは鉄道で約1時間という近郊都市である。近年は首都圏のベッドタウンとしての性格が強まり、2001年9月には人口が10万人を突破した。

 一方で江戸時代から続く農業も健在で、農地が市の面積(55平方km)の約20%を占めている。稲の収穫量は県下第4位、酪農業は生産額や家畜飼育数が県下第1位という実力を有している。また、市や農協では様々な果物を「フルーツの里」として広く紹介して果物の直売・もぎ取りなどの観光農業に特化して力を入れ、毎年9月~11月の最盛期には多くの観光客でにぎわっている。


2.日本最北のミカン栽培地

 果樹栽培で最長の歴史を誇るのは、特産品である「子易柿(こやすがき)」で川崎から江戸時代に栽培方法が伝わって生産され、現在に至っている。柿の主産地は神奈川県の名峰である大山(1251m)の山麓の子易地区で、地名が柿の名の由来である。最近ではこの子易柿を原料にワインも製造され、新しい名産品として好評を博している。

 ミカンは明治時代末期に静岡や小田原などから栽培技術が導入され、秋になるとハイキングや登山などで訪れた人々が土産品として購入している。伊勢原のミカンは中国原産の温州(うんしゅう)ミカンがルーツで、栽培地域が日本の北限(北緯35°)に位置する「日本最北端のミカン」として有名である。

 第二次世界大戦中は米や穀物生産の増産によって、その栽培面積が激減した柿やミカンなどの果樹栽培は、やがて高度経済成長期の所得向上や消費者のニーズに対応して急速に生産量が伸びていく。特に重要な果樹として、ブドウ・ナシの栽培が本格化したことが挙げられる。


3.「直売」と「もぎ取り」に特化した観光農業

 昭和30年代以降、ニューフェイスとして出現したブドウ・ナシは消費者から歓迎され、種類や生産量を拡大していく。ブドウは巨峰・デラウェア・ピオーネなどの甘くて大粒の品種が作られ、ナシは幸水・豊水などが栽培されている。

 当初は卸売市場に出荷していたが、山梨県産や長野県産などに押されて苦戦を強いられた。そこで思い切った方針転換を行い、卸売業者を通さず、消費者と直接に向き合うことを主眼に直接販売方式と観光農園化を断行した。この結果、所得は向上の一途をたどり、現在では小田急線の伊勢原駅・愛甲石田駅や国道246号線沿いなどに6つの直売所を設け、観光農園も23ヶ所になった。

 こうして伊勢原市の果樹農業は県下でも有数の規模と生産額を誇り、名実ともに「フルーツの里」として多くの人々に新鮮で安全な果実を供給している。

                         【県立二宮高校  比佐隆三】

写真1 国道246号線沿いの福田果樹園 果樹のもぎ取りのできる観光果樹園である。



写真2 同じく国道246沿いにある成田農園 近くにはマンションが迫る。こちらも販売所があり、またもぎ取りも出来る。




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