湘南地区No4-3  湘南最大級の再開発・湘南C-Ⅹ都市再生事業 (藤沢市)

(2008年5月作成)

 


1.工場の移転と再開発

 近年、県内各地で工場や事業所などの移転や産業の空洞化が進み、それにともない跡地の再開発事業が顕著になってきている。それは40万都市、藤沢市も例外ではない。かつて大船駅・辻堂駅間の東海道線沿いの工場群においても、本稿で取り上げた関東特殊製鋼のほかに、日本電池(→ショッピングセンター「湘南モール」),エルナー本社(→マンション)、武田薬品工業湘南工場(2006年3月操業停止→県の企業誘致制度で研究所新設へ)などの上場企業が移転・撤退をしている。ちなみに敷地が藤沢・鎌倉両市にまたがっていた武田薬品工業湘南工場は、2002~05年度にわたって、4年連続で藤沢市の法人市民税納税額が1位の事業所であり、その撤退は税収の減少や雇用等の面からも大きな課題となった。

 これに先立つ2002年11月、辻堂駅北側に隣接する関東特殊製鋼株式会社(カントク)が全面撤退することを表明した。その結果、約21ヘクタールにもおよぶその広大な工場跡地の活用、再開発は藤沢市の都市政策や地域住民にとっても大きな影響を及ぼすことが予想され、その整備・対策が重要な課題として位置づけられた。以下は、「湘南最大級の再開発」ともいわれるこの都市再生事業計画についての、現在までの経過である。


2.湘南C-X都市再生事業

 関東特殊製鋼は住友金属工業系の特殊鋼会社で、昭和初期に藤沢市辻堂神台の現地に工場が設立され本社も併設された。同社は撤退表明後、2003年11月に、ロール事業等について関西地区への移転を完了し、生産活動を中止した。2004年5月にはこのカントク跡地等を中心とした辻堂駅周辺の約30ヘクタールが、都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域に指定された。この都市再生事業は「湘南C-Ⅹ(シークロス)」と命名され、2006年7月29日に、鍬入れ式が挙行され「湘南C-Ⅹ都市再生事業」として着工、本格的に事業が始動した。2007年11月には北口バス・タクシー等の乗り場が仮設交通広場に移転し、利用者にとっても工事の進展が実感できる状況になってきた。2009年には一部街区についての街開きを行い、翌年春には計画が完成する予定となっている。

 この事業の主体は独立行政法人都市再生機構であり、地権者の同意のもと土地区画事業を実施している。計画の枠組みとしては①土地区画整理事業、②街路事業、③辻堂駅改良事業(2010年完成予定、将来的には貨物線にもホームを増設することを検討)を中心とした交通結節点強化事業、④市内の産業空洞化を防ぐための企業誘致などから構成されている。これらを受けて具体的には計画地域を、Ⅰ交通結節機能ゾーン、Ⅱ産業関連機能ゾーン、Ⅲ広域連携機能ゾーン(広域行政サービスや神台公園など)、Ⅳ総合病院等の医療・健康増進機能ゾーン、Ⅴ大型商業施設やアミューズメント施設、住宅などからなる複合都市機能ゾーン、Ⅵ南口を含めた既成市街地活性化ゾーンの6タイプの機能別ゾーンに分けて事業設定されている。

  現在の具体的な進行状況として、産業関連機能ゾーンの企業誘致に関しては、共同油脂や住友精密工業・大栄・大新工業製作所のほか、ジェイコム湘南の進出が決定している。ちなみに、湘南C-Ⅹにともなう雇用は1万人程度になることが期待されている。その他のゾーンにおいても医療法人徳洲会やメディカル・フィツトネス施設などの進出が決定している。2008年度中には基盤となる土地区画整理事業や街路事業が完了する予定であり、住友商事が開発する都市型ショッピングモールも2009年秋のオープンを目標に建設着工する予定になっている。湘南の新しい街づくりとしてこの「湘南C-Ⅹ都市再生事業」は大いに注目されている。

【県立大和南高校 小澤俊彦】



写真はすべて2008年3月撮影


写真1 辻堂駅のホームから北側をのぞむ



写真2 辻堂駅北口から茅ヶ崎駅方面をのぞむ



写真3 以前の交通広場も移転し現在は工事中



写真4 将来計画を示す看板



写真5 奥は大庭の丘陵


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