横須賀三浦地区3-4  断層銀座の三浦半島 (横須賀市)

2008年9月作成

 

1.三浦半島の活断層

 数多くの活断層が横断している三浦半島だが、その中でも特に三浦半島断層群の北武断層は有名である。以前より研究者の間では知られた存在であったが、兵庫県南部地震の直接原因が活断層だったこともあり、その後トレンチ調査(試掘)が進み、よりその詳細が明らかになってきた。政府の地震調査研究推進本部の「主要活断層帯の長期評価の概要」によれば、我が国の主な活断層を発生確率順に「高いグループ」「やや高いグループ」「それ以外」に分けているが、北武断層はその南に位置する武山断層とともに「高いグループ」に属し、今後30年以内のマグニチュード6,7程度の地震発生確率は3%以下の要注意断層である。ちなみに日本で最高の確率を示しているのは同じ神奈川の神縄・国府津松田断層で、マグニチュード7,5程度の地震発生確率が16%以下である。


2.北武断層周辺の開発

 北武断層は三浦半島東岸の横須賀市野比から武山、太田和を通り相模湾側の長坂まで続く全長約12㎞の活断層である。断層の存在は航空写真等を見れば明らかで、多くの谷が右横ずれで変位していることが見て取れる。前出の地震調査研究推進本部によれば、最新の活動時期は6~7世紀で平均活動間隔は1900年~4900年程度である。北武断層上には横須賀市立野比中学校や三浦縦貫道等公共施設が存在し、ひとたび活動すればその被害が懸念される。加えて周辺地域は昭和40年代から宅地開発が活発に行われており、断層上に住宅が建設されていることも珍しくない。

 そこで、横須賀市では市民に対して積極的に広報活動を進め、断層の存在の周知に努めている。緑政部傾斜地保全課ではその名も「横須賀市の活断層」なる小冊子を作成していたり、深田台にある市立自然人文博物館では頻繁に市民向けに活断層セミナーが開かれたりしている。また、2002年には市中心部に市民の防災教育拠点として「あんしんかん」が開館し、市内の小中学生の防災教育に利用されている。さらに市では都市部開発指導課が主導して、北武断層上の市内の2カ所の開発計画に対して建築規制をかけている。1カ所はYRP(横須賀リサーチパーク)と呼ばれる97年開業の情報通信拠点である。総務省(当時の郵政省)、横須賀市、京急と情報関連民間企業が企画、整備した研究施設地域だが、敷地内の断層直上は建物の建築を規制している。もう1カ所が京急ニュータウン野比海岸と呼ばれる住宅団地で95年に開発が終了しているが、この区域内の断層上も建築規制がかけられ、断層線の直上は公園として利用されている。この規制は自治体が主導する断層上の建築規制として当時話題を集めた。とくに条例を制定して建築規制を敷いたというような誤解を産むことになったが、実際には地区計画上の規制で、この2カ所限りの限定的な手法である。

【公文国際学園 米山宏】


写真1 ニュータウン内の断層上の公園 2008年1月撮影



写真2 YRP内の推定断層線(道路と平行に伸びる土手)2008年1月撮影


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